サーモンとは一味違う魚、スティールヘッド(テツガシラ)の魅力とは
海外まで出かければそれはそれは大きな魚がバンバンヒットするだろう、という期待や安心感を見事に砕いてくれる魚。
時に雨や寒さなど過酷なまでの気象条件の中でキャストを繰り返し、やっと釣れるか釣れないかという魚。
場所によっては1週間釣りをして一発当たればよしという魚。
ゆえに精神的にもタフでないと狙えない魚。
それがスティールヘッドと呼ばれる降海型ニジマスです。日本語で言うとテツガシラ(鉄頭)です。
このスティールヘッドは乱獲のため、一時は絶滅するのかと危惧されていました。
つまりなかなか釣れない魚だということです。
そんな幻に近かった魚でしたが、キャッチ&リリースで個体数が増えました。また以前よりも情報が多くなった上、タックルも進化したので、しっかり狙えば釣れる可能性が高い魚になりました。
この魚は一生の思い出になります。
カナダのブリティッシュコロンビア(BC)州にはスティールヘッドが遡上する川がたくさんあります。、BC州の北西を流れるスキーナリバーはプリンスルパートで太平洋に流れ込む川ですが、スティールヘッドの遡上量が多い川としても知られています。また多くの支流があり、 サケ科魚類が好きな人なら、またそうでなくても自然が好きな人なら、そのどの川へ行っても、雰囲気にのみ込まれて感動的な思いをすることでしょう。
BABINE RIVER(バビーンリバー)
スキーナリバーの支流群の中でも私の思い出に強烈に残るのは、上流に流れ込む、バビーンリバーです。
バビーンは人里離れた山奥を流れています。川での移動はジェットボート利用でないと不可能です。
両岸に森が迫るバビーンリバー
撮影・浜口浩一
GルーミスIMX15フィートでフィッシュオン。撮影・浜口浩一
なぜバビーンなのか?
バビーンリバーへのスティールヘッドの遡上量は、他の川に比べはるかに多いほうです。平均サイズ70~80cm。1mを越える巨大なサイズも時にヒットします。それほどスゴイ川なのです。
ここでさえ、乱獲の影響で、一時は遡上数がかなり減りました。
しかし完全なるキャッチ&リリースルールが徹底され、その遡上数は、年々良くなっています。とはいえ、その数は通常のサケの1/100以下、バビーンリバーに遡上するベニザケとスティールヘッドの遡上数は600:1とさえ言われています。
「スティールヘッドとはどんな引きをするの?」
とよく聞かれます。スティールヘッドがいかに巨大とはいえ、塩焼きサイズのニジマスのしか知らない人には、なぜこの魚にそんな魅力があるのかわからないのだろうと思います。
「シイラが川にいる感じ」
と海釣りをする人には答えます。
しかしシイラ釣りを経験したことのない人には、
「自分の力ではいなすことの出来ない想像を絶する暴力的な引き」と答えます。
シイラは船から釣りますが、スティールヘッドは川は立ち込んで釣りますから、自由に動けません。しかも魚は縦横無尽と言うべく川の中を自由に走り回ります。
バンクーバーから国内線で90分。スミザース空港に降り立つと、この景色がある。氷河を抱くハドソンベイマウンテンも温暖化で氷が少なくなりました。
私は1989年にスティールヘッド釣りを始め、92年9月からバビーンリバーに通いました。スティールヘッドは、水温がまだ高い9月中ならドライフライで釣ることができます。想像してください。自分の投げたフライを流しているときに、巨大な魚が水面を流れるフライめがけて浮き上がってくるのです。
大物であればあるほど水面近くへの興味は高いと言われます。
なぜでしょうか?それはもしお会いする機会があったらそのときに直接お話ししましょう。ここで簡単に説明できるものではありません。
私の自己記録、107cmはバブルヘッドというドライフライで釣りました。フライを目で追っているときに見たその光景は、今でも鮮明に脳裏に焼き付いています。丸太棒が浮き上がってきたみたいでした。そしてガバッ!
ロッドはGルーミス、リールはマーキスサーモンⅡ。ヴィック・スリックにて(撮影トッド・ストックナー)
スティールヘッドへの思い出で、1年間幸せに過ごせたと仲間たちが異口同音に言いました。翌年の秋が楽しみで仕方がないというハイな状態が続いたのです。
バビーン通いをしていない現在でも、あの10年間の思い出が私を十分幸せにしています。行ったことのある方とお話をしているときには、私も昨年行ったばかりかと勘違いするほど強烈なイメージで、かつ楽しい話をすることができるのです。
それはアラスカへ行って「キングサーモンの○○ポンドを釣った。」と大物釣りの自慢するタイプの方々とのお話とはまったく違う内容のものです。
バビーンとの出会いは新婚旅行でした。その時期はスティールヘッドの遡上時期ではなかったため、家内とネイティブなニジマスを釣りました。そのときからお世話になったバビーンノーレイクスロッジのオーナー、ピアス&アニータ・クレッグ夫妻にも感謝しています。
新婚旅行は7月でしたが、「9月になったらスティールヘッドが上ってくるから釣りにおいで。」とピアスが誘ってくれたことから始まりました。
難しいスティールヘッドもロッジに滞在して1週間やればなんとかなるよと。
もしあの時誘ってくれなかったら、、、。今このページはありません。
彼ら夫妻も一度来日し、バビーン仲間を集めて一緒に釣りをしたり(なんと加賀フィッシングエリアで)、我が家にも遊びに来てくれました。
2012年、クレッグ夫妻はリタイアし、ビリー・ラボンテ氏が受け継ぎました。ビリーは以前、下流のシルバーヒルトンロッジでガイドをしていたことがあり、そのときは私は一緒に釣りをしました。ロッジの名前はバビーンノーレークススティールヘッドキャンプです。
バビーンノーレイクススティールヘッドキャンプ
NEWS
バビーンの本が発売されました。
本の写真をクリックしてください。
バビーンノーレイクスロッジのオーナー、ピアス・クレッグと、ロッジの常連客ピーター・マクミランの共著です。
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バビーンリバーへの想い
この川が私たちの心の中をいつまでも流れています。
デッカいネット、デッカい魚、釣った記憶と、自然の中に身を寄せた思い出が。
地球の裏側まで出かけた記憶はいつまでも。
アラスカに魅せられた文豪・故開高健は、その出演映画「河は眠らない」の中で「毎日さんまを食べて、お金を節約して行きなさい。その思い出は何万回とあなたの心に蘇るのだから渡航費は決して高くない。」と言いました。
この話は本当です。
付け加えるなら、心に蘇るだけでなく、いつでもその川の思い出が、私たちの心の中を流れているということでしょうか。
ですから日本の川で、愚かな河川改修工事を見た時も、「ここは日本だから。」と納得できます。
川を工事するとき、魚道だけを改修しても意味がありません。魚道は魚が上下流へ行き来できなければ意味がないのです。見かけの魚道はあっても機能していなもの、あるいは機能しなくなってしまった魚道がどれだけ日本の川にあることでしょう。
バビーンリバーへは、プリンスルパートから、堰堤のないスキーナリバー本流を通じて400kmもスティールヘッドが上って来るのです。想像できますか?
アラスカのサーモンに魅せられた開高さんと同じように、フライフィッシングをする私たちは、カナダのスティールヘッドという魚に惚れこんでしまいました。
バビーンノーレイクスロッジのオーナー、ピアス&アニータ・クレッグと息子のジェシー(中央)彼らは2011年末。リタイアしました。
ステールヘッドを釣るために
フライフィッシングで釣るために悩みぬき、そして時には苦痛とも言える楽しい毎日を過ごしましょう。
スティールヘッドを釣るために何故わざわざ難しいと言われているフライフィッシングをするのでしょうか?
それはフライフィッシングが面白いからの一言に尽きます。
約20年前、スティールヘッドの情報が日本にはほとんどなかったころ、専門誌の記事に目を光らせ、ほんの少しの情報に多くの人が興味を示し、すがりつきました。
50年前にはスティールヘッドがフライで釣れることは知られていなかったそうです。ですからそれまではスプーンで釣ったり、ウキ釣りをしていたそうです。
バビーンノーレイクスロッジには、かのビリー・ペイト御大がデッカいスティールヘッドをスプーンで釣った写真が飾ってあります。
そして30年ほど前からフライフィッシングが本格的に始まり、それは「チャレンジ」と言われていました。
サイエンティフィックアングラーズ社のフライフィッシングビデオでは、トラウトを中心にいろんな種類の魚を釣るフライの技術を紹介していました。スティールヘッドはチャレンジとしてマスタリーシリーズに入っていたのは懐かしい記憶です。
またそれまでドライフライにスティールが出てくるなんて最初はだれが信じたでしょう。
マスタリービデオの4本あるスティールヘッドのビデオのうち、なんとその3本(1本はジム・ティーニー)に出演している有名なアングラー、ラニー・ウォーラーに話を聞きました。
彼の知るところでは、以前はすべてシンキングラインで川底にフライを沈めて釣りをしていたそうです。
ある時、スティールヘッドをフライで釣ろうと新しいフライに変えて投げた人がいました。そのフライは最初は乾いているので水面に浮いているわけですが、それにスティールヘッドが食いついてきたそうです。それは偶然でした。
しかしその日、フライを付け替えるたびにに乾燥して浮いたフライに出ることがあまりにも多くあったそうで、試しにフローティングラインでやったらよく釣れることが分かり、それとほぼ同時にドライフライの釣りが始まったそうです。
もちろんバビーンリバーでもスティールヘッドはドライフライによく出てきます。浮きあがって食いつくシーンは強烈の一言に尽きます。それも大型が掛かるのでたまりません、、、。
沈めて釣るか、表層を釣るか、水面を釣るか?多いに悩んでください。
写真は多いほどいいです。だから一人で行くよりは写真を撮ってくれる仲間と行きましょう(撮影・浜口浩一)
2010年秋、バビーンに初渡航した山本恵子さんはツーハンド歴1年未満でした。彼女は時間がある度に練習に励み、バビーンに挑みました。
ピアスが「ケイコはマジックガール」と言っていましたが、初参加で初日の最初の場所でわずか20分でスティールヘッドを釣ってしまったそうです。しかもこの日3本掛けて2本ランド。
1週間で9尾キャッチ。バラシも結構あったそうです。
あり得ませんね。これはハンティングと言われるスティールヘッド釣りではありません。
ガイドがいつもついていてくれたと言ってましたが、、、。それでも立派です。
スティールヘッドフィッシングは3日間アタリがなくて、4日目にやっとヒットしたのをバラシてしまい泣いてしまう、というのが当たり前の釣りでしたから。
2010年はスキーナリバーへのスティールヘッド遡上量が1958年からの観測史上、2番目に多かったそうです。
ちなみに最高の年は1998年。この年私はバビーンにいました。結果は、、、、。
凄すぎて信じてもらえなさそうで書けません。
タックル
今では当たり前になった、スペイ、スカジットのツーハンドロッドは最初は使われていませんでしたが、日本ではすでにサクラマス狙い等で、ダブルハンドと呼ばれて使い始めていましたので、私たちはごく当たり前にバビーンリバーにも持ち込んで使っていました。
ほとんどはオーバーヘッドキャストでしたが、今ほど完成されていない、いい加減なロールキャスト、スペイ、そしてジャンピングロールキャスト(タッチ&ゴーのスペイキャスト)も行ってバックスペースのない場所をカバーしていたのです。
最初は「この川でツーハンドは必要ない。そんな長いロッドに頼って釣りをしてはいかん。」とピアスは笑ってましたけどね。そのころピアスたちガイドが使っていたシングルハンドのロッドはほとんどセージでした
そして今や当たり前になったツーハンド。13フィート前後の7~8番ロッドに、スカジットライン450グレインぐらいを装着して釣るのが今の主流だそうです。
ロッド:13フィート~15フィ-ト
ライン:スペイ7~8番 または360~450グレインス カジット。
リール:ライン+バッキング200m。ラージーアーバーが主流。バッキングは100mでは足りないですよ。念のため。
人気のあるロッドはGルーミスGLXのドレッジャーとスティンガー。サイズは7/8です。
Gルーミスのインストラクターが、ピアス・クレッグのロッジに来てスカジットキャストを教えたそうで、みんなが右へならえしてしまったそうです。
以前日本でカプラス神話があったころに似ていますね。
ピアス・クレッグがドレッジャーで釣った40インチ(撮影・ピアス)
怖いのは、みんなが使っているのでGルーミスでなければダメなんじゃないかという不安に陥ることです。
でもご安心あれ
以前は、シングルハンドで釣っていたのですから。どんなツーハンドを持って行っても、それらのシングルハンドよりは使い勝手がいいはずです。
前述のマジックガール、山本さんのタックルを紹介しましょう。
ロッドはB社スペイの13フィート7番。
リールはビジョンGT11(軽いリールです)
ラインはCNDのGPS 7/8
1週間この1セットで通したそうです。
フライは彼女のオリジナルのKFアクシオ。
こんなロッドやリールを使っていました。
シングルハンドに適用されていたAFTMA規格が、スペイ用ツーハンドになると適用されないので、ラインの選び方が難しいですね。ここでは私が使っていたタックルの紹介ですが、すべてAFTMA規格で解説します。
スペイならオーバーへッドの規格より2~3番手おとしたものになります。
つまり10番指定のオーバーヘッドロッドなら7~8番ということになります。
・ツーハンド(13~15フィート)
アルトモアサーモンの15フィート10番(ダイワ)
オスプレイ14フィート9~10番(ダイワ)
カプラスグリルス14,6フィート10番(サワダ)
カプラスサーモンパー13フィート9番(サワダ)
アルトモアS1310 13フィート9番(ダイワ)
IMX FR1810 15フィート10番(Gルーミス)
私は今でもアルトモアS1310を使っています。
スカジットの400グレイン、またはGPS7/8 を乗せてカラフトマスやシロザケを釣っています。
・ツーハンド用リール
ビッグゲーム3N(エイベル)
ビッグゲーム3(エイベル)
LP3,5(ラムソン)
マーキスサーモンⅡ(ハーディー)
・シングルハンド(9~10フィート)
アルトモアハリー969 9フィート半9番(ダイワ)
アルトモアS909 9フィート9番(ダイワ)
RPL810 10フィート8番 (セージ)
HLSバビーン 10フィート8番(オービス)
スペースシューターSS9108F(サワダ)
・シングルハンドリール
ビッグゲーム2(エイベル)
ビッグゲーム3N(エイベル)
スーパー8(エイベル)
スティールヘッダー(サワダ)
アルトモアX300D(ダイワ)
これはシングルハンドロッドで釣れたオス。
・ライン
フローティングはほとんどウエイトフォワード。スペイのみダブルテーパーでした。
シンキングは最初はシンクティップ10~13フィートのタイプ4や、シューティングヘッドタイプⅢなどを使っていましたが、その後ティーニーT200、T300や、コートランドQD225や325などハイスピードシンキングのショートヘッドを多用するようになりました。これらのラインは最近まったく使いませんね。
今なら各社のスペイ、スカジット、スカジナビアンラインを使えば楽にキャストできると思います。でも行くならしっかりと練習して行ってくださいね。
私は今、ロールキャストが得意ですが、バビーンリバーで釣りたいがために特訓した賜物だと信じています。
フライの選び方
悩むところですね。フライセレクション。でもこれが一番楽しいことでもあります。多いに悩んでください。
まずフックですがサーモンフックのやや太いものを使います。なぜなら魚がデカくてよく引くからです。
愛用したのはTMC700と7999です。シャープなハリ先が特徴です。
ドライ用細軸の7989は、掛かりどころが悪いと伸びたので、使うのを止めました。
ドライでも上記の7999のフックを使います。カナダ人もアメリカ人もみんなTMCを使っていたので私たちのセレクトは間違いなかったでしょう。
バックキャストで後ろにぶつけて知らないうちに某社フックが折れていたり、あるいは傷ついていて、フッキングと同時に折れたりしたこともあります。今はロールキャストを多用し、オーバーヘッドキャストをほとんどしませんから、その心配はまずありません。
信じられないほどカラーがが出たオス
で、パターンは?
パターンブックを見ると数限りないスティールヘッドフライがあります。これはどういう意味でしょうか?
つまりフライはなんでもいいってことです。
イワシを食べているマグロを釣ったり、ユスリカを食べているシビアなヤマメを釣る時はマッチザベイトとはマッチザハッチと言いますが、スティールヘッドフィッシングはマッチザなんとかっていうスタイルではありません。アトラクターウエットフライです。
早い話、放流マスをマラブーなど派手派手のフライで釣ったり、逆にブラックやオリーブなど地味なフライで釣ったりしますよね。あの感じです。
大切なのはフライパターンよりアプローチなのですから。そして探り続けることですから、、、。
でも気になります。
有名どころは、、、、、。
ウエットフライなら
グリーンバットスカンク
スティールヘッドがいろいろな色に反応する時、赤、白、黒、緑、シルバーのどれかに反応すればこのフライを追います。と言いますが本当でしょうか?
グリーンバットスカンクで釣れた96cmのオス。凄かったデス。ラムソンLP3,5のクリックが飛びました。ロッドはダイワUKのオスプレイ14フィート。
シルバーヒルトン
超有名なしかもめちゃシンプルなパターン。下流にシルバーヒルトンロッジと言うスティールヘッドロッジもあるほどです。小さく巻くと日本でヤマメやニジマスも釣れます。
シグナルライト
ブルーブルースもそうですが、マラブーウイングのフライはよく釣れます。蛍光グリーンとピンクのフロスの輝きがいいという説も。
ディーンリバーランタン
ボディがオレンジに光るのでよく釣れます。ディーンリバーへよく行くという二人組のアメリカ人がバビーンに持ち込み、そのスーパー威力を見せてくれました。
ウーリーバガー
万能フライです。ブラックも、パープルもいいです。
ブルーブルース。多くの方がこのフライの存在によって、最初のスティールヘッドを手にしました。
ブルーブルースで釣れたハバヒロテツガシラ。究極の体型です。
もっともウエットフライらしいフライを作りたくて、スペイ風だけどちょっと違ったアレンジをしました。
ポーラーセッジ(奥山オリジナル)
こんなおおきなトビケラはいませんが、ストーンフライで釣れるというので、モットルドターキーウイングの下にポーラーベアヘアを入れてナチュラルに光るようにアレンジしました。このフライで何尾ヒットさせたかなあ??
最大は105cmをグリースラインメソッドで釣りましたよ。背びれを出して追いかけてきて、食いつくところが見えました。チビリそうになりました(失礼)
もちろんクラシックサーモンフライをヘアウイングで巻いたパターン(ジョックスコットなど)でも使い、結構ヒットしました。美しいフライで釣ると気分いいですね。
有名なグリーンバットスカンク(Green butt Skunk)左写真はアップアイに巻いたものとダウンアイとの比較。右はスカンク(上)との比較。
ジェネラルプラクティショナー(上)とプラクティショナー・ブラック。エビを模したパターンと言われていますが、ならば下は黒こげになったエビ(?・笑)
ゾンカーもパープルゾンカーとBGゾンカー(ブラック&ゴールド)が効きます。両方ともキールタイプにして根掛かりを防いでいます。
これらのフライ、カラーは、黒系、紫系、オレンジ系です。
ガイドのトッド・ストックナーからもらったフライです。
ローウォーターパターンと呼ばれるデカいハリに小さく巻いたパターンも時に有効です。ドライフライにボイルがあって、そこにスティールがいると分かっているときに使います。ドキドキしながらグリースラインするわけですが、、、。
このページの一番下「悠々として急げ」のファイト写真はこのフライ(写真上)で掛けたオスとの刺激的なシーンです。
そして必殺は、、、、。
グローバグ (エッグフライ)です。これは最強のフライです。
なぜなら、、、、。
ニジマスはイクラが大好きなんです。
スティールヘッドが海に下る前、つまり川にいるニジマスだったころ、サーモンの卵を大量に食べていたからだと言われています。 転がすだけでなく、水面すれすれをスイングさせても追いかけてきて食いついてきますから、、、。よっぽどイクラに固執するのでしょう。 これだけがマッチザベイトでしょうか??
エッグフライで釣れちゃうところが、唯一スティールヘッドの情けないところだと私は感じています。
ところで、大物を釣ったらその記念のフライは写真とともに飾りたいものです。しかしグローバグではとても飾れませんね、、、、。オレンジ色の毛玉ですから(笑)。
バビーンスペシャルというツーエッグのパターンもありますが、単なるグローバグのほうがよく釣れるぞ。とピアス・クレッグが言ってました。
そして今、一番のホットなフライは??
イントルーダー です。
ピンク、ブラック、そしてパープルがやはりいいらしいです。サドルのヒラヒラ感がとってもいいのだとか。
これはタコベイトみたいなフライです。イントルーダーとは侵入者という意味で、重くて大きいフライです。これを投げるためにはスカジットスペイシステムじゃないと危ないです。エド・ワード氏はスカジットマスターというDVDの中で「狂気のフライ」と呼んでいます。
イントルーダーが活躍するのは底すれすれを流す時です。目の前にデカイフライが自分のテリトリーを侵すようにやってきたら、、、。まるでルアーみたいですね。これも飾るにはちょっと、、、。
以前は超ロングのゾンカーと言うべき、イールフライが流行りましたが、今はこのイントルーダーだそうです。しかし相変わらずグリーンバットスカンク、普通のゾンカー、ランタンなどでは釣れますから、こだわる必要はありません。
大きな重いフライを投げるために重いスカジットラインを使って苦労するより、軽いラインで普通サイズのフライを使うほうが安全だし、疲れません。
余談ですが、イントルーダーの赤やピンクは、日本のシロザケにも有効です。
そしてイントルーダーのいいところは、フックの交換が出来ることです。
これは黒と、青のイントルーダー。フックを深く呑み込んでしまうこともあるのでよろしくないこともあると、ピアス・クレッグが言っていた。
私は95年に今は亡き、ミスターバブルヘッドと呼ばれたヴィック・ランポー爺さんからイントルーダー(もどき)をいただきました。しかし当時はその名前はありませんでした。
究極の釣りを求める貴方は
ドライフライで
食いつく瞬間が見える刺激をどうぞ
バブルヘッド(ヴィック・ランポー作)
92年に撮影した「究極のスティールヘッドに挑む」で日本に初めて紹介されたスティールヘッド用ドライフライ。頭の扇で泡を出しながら水面をスイングすると、ガバッと激しく食いついてきます。
ボーマー(ボンバーと発音する日本人も多い)
上はスティールヘッド用、下はアトランティックサーモン用と言われていますが、どちらもOK。リッフルヒッチをするとルアーのペンシルベイトのように水面を滑走します。
ウォーラー・ウエイカー(ラニー・ウォーラー作)
サイエンティフィックアングラーのマスタリービデオで、その威力が有名となったフライ。これはシルバーヒルトンロッジで一緒に釣りをしたときに本人に巻いてもらったものデス。
上から見るとこんな感じです。
バークレイマウス (Bulkly Mouse)
正式な発音はボルクリィマウスって感じですが、バークレイって日本人は発音しちゃいます。
スミザースの郊外を流れるボルクレィリバーのスティールヘッドガイド、コリン・シャドラックさんのオリジナル。
スティールはドライフライが一番釣れる、と教えてくれた人でもあります。ゆっくり、パクッと口を開けてスティールヘッドが食いつきます。(ビデオもありますよ)
これらのフライはみんなバスバグみたいです。他にもフォーム素材を使ったフライでも釣れると思います。
例えばチェルノブイリアントのパターンでTMC700にタイイングするとか、、、。
●ドライフライフィッシングのコツは?
まずドライフライにスティールヘッドが食いつくのだと信じて使い続けることです。
ラインが流れに引かれてフライも一緒にスイングし、水面をツツツツーッと滑るというに動く、これをウエイキングと言いますが、そのフライにドバッ、ガボッ、ジュバッなどなど派手に言えばきりがない表現法が似合う強烈なアタックで食べるときもあれば、頭をスッと出してヤマメがミッジを食べるようなライズで食いつくシーンはどちらも興奮ものです。
スティールヘッドがフライに食いつくシーンが見えるのです。
この時アワセてはいけません。(本当!)
魚が口を閉じて水底に戻り、ラインの重みでフライが引かれ、魚の口にフックが触れた瞬間にグーンと重みが伝わってきます。それから「よいしょ。」とロッドを立てればいいのです。
そのあとは夢のようなバトル。皆さんでご自由にどうぞ。想像してください。時に80cmを超える魚と、1本のフライラインで繋がっているのですよ。
叫ぶもよし、もだえるもよし。エッチな想像をするよりも、こっちのほうがよっぽど震えるという友人もいたほどです。(私もか?)
何回もドライにアタックして食いつかない場合。フライをウエットに交換したり、ナチュラルドリフト(グリースドラインメソッド)などを行って食いつかせてしまうという努力も必要です。グリースドラインに関しては別途調べて勉強してください。ここで書くにはあまりにも深すぎます。
ウォーラーウエイカーで釣った95cmのオス。場所はトーキョーズバー。
スイングするフライに5回食いつこうとして私を興奮させ、最後の最後でロッドに重みが伝わり、至福させてくれた1尾。ロッドはオスプレイ14フィート。
で、何をやっても食いつかないで、諦めてまたドライに変えて、探りを続けるためにステップダウンをしようとしたその1投目で、
ガバッ!バシューン!
ということもありました。
女心とスティールヘッド、
本当にミステリアスな生き物です。テツガシラってやつは。
山本さんもバブルヘッドでオスを釣った。逆光だったので頭がモコッと出たのを「あれっ?」と思った次の瞬間、ロッドがひったくられたそうです。
最近では結果のみを求め、ドライフライを使う人が少なくなったと言う話も聞きました。しかしスティールヘッドをドライで釣るという夢はあきらめないでください。
水面は人と魚の生息域の境界線です。そこへ誘い出して掛けるのですから、最もフェアーでエキサイティングなのです。
またドライで釣れる状況ならば、ウエットを使えばもっと釣れると言う人もいますが、前述の通り、ドライにしか反応しないデカイ魚がいることもお忘れなく。
数や釣果のみにこだわるなら前述のイクラフライ、グローバグをお勧めします。
オプションはルアーフィッシング
まる1日フライを振って、疲れて帰ってきたあとはロッジの前でオプションのチョイ釣りがあります。
シヌークサーモン(マスノスケ)
コーホサーモン(ギンザケ)
ピンクサーモン(カラフトマス)
ブルチャー(オショロコマの仲間)
などが「え、こんなに簡単に?」とほぼ日常的に釣れちゃいます。
たまにはデッカいスティールヘッドも。
サンダル履きで釣った写真がありますね。あれは嘘ではないんです。
また90cmというデッカイサイズ。「なんでフライに掛かってくれなかったの?」と思う魚もロッジ前(イーナーズプール)で釣れました。こっちはウエイダーを履いてましたが、、、。
ルアータックル
ロッド 折れなければなんでも良い
リール 壊れなければなんでも良い
ライン 12ポンド以上ぐらいで切れなければなんでも良い。
ルアー 12g以上の重さのスプーン、なんでも良い。
フック シングルフックバーブレス1本のみ。(がまかつオクトパスフック1/0がお勧め)
以上のようにバビーンリバーでのルアーは何でもよくて、釣れちゃいます。まじめなルアーマンが聞いたら怒るかもしれませんが、ここでのスプーンは「ガキの遊び」みたいに簡単でした。(2009年もそうだったそうです)
そういえばロッジのスタッフの女性や、ピアスの息子が小さいころ、ここでスプーンで釣りまくっていました。
そんな簡単なルアーですが、私の自慢はサンダルでスティールヘッドを釣ったこと。私はサンダルスティールヘッダーなのです。
2010年9月、サンダルスティールヘッダーに新たなムーブメントが、、、、、。
私たちの仲間「フィッシュ&フィンズ」のメンバー、山本恵子さんはサンダルでツーハンドロッドを振りスティールヘッドを釣ってしまったのです!!!
さすがマジックガールですね。
ロッドは借り物のGLXトラディショナル15フィート7/8。
悠々として急げ
いつかまたきっとバビーンリバーで釣りをしたいと思ってます。 子供たちが巣立ったのち、家内と出かけましょうか?
新婚旅行で行った場所ですから、、、。それまで家内が一緒にいてくれればいいですが、、、(汗)
あるいは子供たちがニートになっちゃったりして、、、。
子供が巣立ったとき、定年退職した時に離婚なんてケース、少なくないそうです。
私も自由気ままに釣りをして生活してきましたから、その時に見下り半を突きつけられるかもしれないという恐怖もなくはありません。(本当)
これまでの誘惑のような記事や写真を見て、きっとあなたもいつか海外へ行きたいと思い始めていることでしょう。
でも
いつかと、お化けは出たことない。
世界中にある大自然の中で「過去より良くなっている場所」はおそらくないでしょう。アル・ゴア氏の「不都合な真実」という環境映画でも訴えていますね。地球規模の変化を、そして変化させているのは人間だということを。
ですから、、、、。サケ科魚類に興味のある若者は、できるだけ早く決心して現地へ行くことをお勧めします。
我が師匠の井田斉先生も、
「原産地で本物に出会うことが大切だ。」と申されております。
移植した魚を楽しむのとネイティブを釣るロマンとは違うのです。
人生は長いようでそんなに長くないです。
開高巨匠のアドバイスどうり、
「悠々として急げ」です。
渡航費用は安くはありませんが、開高先生のアドバイスは正しいと思います。
サケ科魚類の本場、アラスカ、カナダ、、、。できれば北米大陸をお勧めします。
そのどの川へ行っても、日本の最高の川よりも遥かにいい川であることは間違いないです。そして気分を高めてくれます。
出来ればスティールヘッドを狙ってください。
でも、これだけはご注意
スティールヘッドは、私たちの気持ちを変えてしまいます。時に私たちを生意気にしてしまいます。
特に以下の症状が出たらご注意を。
・何匹かのスティールヘッドを釣ったらその凄さに酔いしれ、偉くなった気がする。
・自分は特別なアングラーなのだと勘違いする。
・現地で得た曖昧な情報なのに、さもすべてを知っているかのような大きな気持ちになる。エラそうになる。
・管釣り、渓流解禁日、サケ釣りなどの混んでいるところで釣りをする人の気が知れないと、上から目線になる。(本当は混んでいる場所だと自分の技術では釣れないことを知っている?)
・スティールヘッドの余韻でしばらく釣りに行く気がしなくなる。
魅力に取りつかれ、熱狂とも言いますが変な人間になってしまいます。スティールヘッダーとは、スティールヘッドに狂っておかしくなった人のことを言います。
私もそうでした(笑)
国内でうまくいかないこと、つらいことがあっても、秋にまたカナダへ行けば幸せになると自分にいい聞かせていました。
いや、ぎりぎりの線でセーフだったので今こうしてお伝えできるのかも知れません。
スティールヘッドを知ったからこそ、日本の魚をもっと愛してください。ヤマメやイワナはもちろん、シロザケやカラフトマスも。そして身近な川では、コイ科のマルタやコイも素晴らしい魚です。
そんな、病気になってしまうほどスティールヘッドが魅力的であることは否定できません。
それだけではありません。彼らを育くみ、海に下し、遡上してきた親魚を産卵させる周りの環境や自然は素晴らしいのです。
地元で魚や環境を守っている人たちも真剣です。魚だけでなく、その周りを見てください。
この狭い日本では絶対にあり得ない世界がそこにあります。
もう一度言います、、、、、
悠々として急げ
コーナーポケットにて。バブルヘッドに出た魚を、フライをひっかえとっかえて最後はグリースラインでヒット。ロッドはGrルーミスのIMX。当時のガイド、トッド・ストックナー氏が駆け付けてくれてミノルタの黄色い防水カメラ(ネガフィルム)で撮ってくれたプリントをスキャンしたもの。それなりに味があって気に入っています。あなたもぜひこんな写真を撮ってもらったらいかがでしょう?
感動して帰国したら、失われゆく日本の自然に対し、個人レベルでできることも考えてください。
Think globally, Act locally.
人を批判することは簡単です。でもその前に批判できるほど自分が行動しているの?って自分の心に問い正してみてください。
私は今、地元の多摩川を見直して、非常に好きになりました。