日本のサケ釣り
祈願!サケで復興するぞ!福島県楢葉町木戸川
2014年も木戸川のサケ釣りは出来ませんでした。地元の早い復興が望まれます。
避難解除になったけれど(2012年11月)
2011年の3月11日、東日本大震災の津波、そして原発事故から避難生活が始まった福島県楢葉町。2012年8月10日に避難区域が解除され、住民が戻る準備を開始しています。
楢葉町を流れる木戸川の漁業組合では、津波被害で春に放流予定だったサケの稚魚と、アユが全滅しました。孵化場長の鈴木謙太郎さんは、津波が来る直前まで孵化場にいて、沖に波の壁が出来て「こりゃまずい」と高台に逃げのぼり間一髪で命拾いをした方です。彼の話では、サケ水槽が津波で水没していたから、何割かが引き波と同時に海へ出て行ったくれたことを願う、と言うことでした。
そしてそのあと直ぐに避難命令。約1年半、川に対して何もできずに過ごしてきました。昨年秋には特別許可を取って楢葉に入り、木戸川のサケを見に行ったそうです。人の愚行には関係なく、サケは力強く川をさかのぼり、捕獲できないので普段より上流まで行って産卵していたそうです。周辺に産卵を終えたサケの屍が転がり、これがまた川の栄養になるんだなあと感動したそうです。川を上り自然産卵するサケ。オスが他のオスを蹴散らす行動や、噛み付き合い、メスに産卵を促す行動も観察できた。
せめてこの子孫は大きく育って欲しい。
2012年4月には東京海洋大学のフィッシングカレッジで鈴木さんを招き、原発とサケの話をしていただきました。
その夏避難解除になったものの、漁協ではサケの捕獲準備は出来ているはずもありません。津波でめちゃくちゃになった漁協の加工所、事務所や孵化場は11年3月11日のままで、電気や水道も来ていない状態です。今年もまたサケは帰ってきましたが、安全が確認されないため、県から捕獲許可が出ないそうです。
それでもモニタリング調査の申請をして投網、アワセ網、地引網、釣りの4つの方法でサケを捕獲し、放射線量の測定を開始することになりました。
2012年10月26日、30日、11月5日に捕獲したサケをアクアマリンふくしまの研究所で検査し、魚肉や内臓器官、生殖腺を測定したところ。結果はすべてND(未検出)でした。産卵後の死骸からも検出されませんでした。一安心です。
残念ながら2103年もサケ事業は行われませんでした。14年も出来ないそうです。人の生活の確保が先なのですから、、、。
私のツーハンドのフライロッドは国内ではサケに使うために復活した。早く木戸川で活用したいものだ。
ところでサケの仲間は川に溯上するとエサを食べなくなり、ルアーやフライを追わなくなります。目の前に来たものをぱくっとやる反射や攻撃はするので釣れないことはないのですが、特にシロザケは中々食いつきません。しかし木戸川に溯上するサケはルアーやフライを普通に追うのです。私は北米の数多くの川や、北海道、東北の川でもサケ釣りの経験がありますが、それらの川ではサケはルアーをほとんど追いません。
しかし木戸ザケはやる気があり、その好奇心の強さは驚かされます。私が木戸川に初めて行った年はフライでなるべく目の前を流れるように苦労しましたがその脇で、友人たちがルアーをビュンと投げ、ただ巻くだけで次々に釣り上げるのをみて不思議に思ってました。
2009年に木戸ザケはそういう魚なのだとわかってからはフライで狙って釣れるようになりました。これは他の川ではあまりないことです。北海道でも、サケを川で釣った場合、「ちゃんと口に掛かっていたか?」と聞かれるのでいかにファールフック(スレ掛り)が多いことを証明しています。やる気のないサケがたくさんいるときは口にファールフックさせるように釣る方法もあり、それでも「口に掛かった」と言うことで納得する人も多いようです。
バックスというサケ用のスプーンにヒットしたメスザケ。遠投し手リーリングするだけで掛かってくるのが木戸川の魅力。
貴重な木戸ザケの釣獲調査が早く復活して欲しいです。
松本組合長は「楢葉は木戸川のサケで復興する。そして全国から釣獲調査に参加しに来て欲しい。木戸ザケの素晴らしさを知って欲しい」と願っていました。
たくさん上ってきているサケが自然産卵してまた子孫を残すことは喜ばしいことでも、漁師としてそれを獲って出荷できない組合員の方の心情を察します。
2012年の2回目のモニタリング調査にて。2014年のモニタリング調査より
増殖事業が復活したら風評被害に負けないよう、釣獲調査にたくさんの方が集まることを重ねて祈願しています。そうなったら現地の民宿も営業していただいて、宿泊サケ調査ツアーなどを組んだらいいですね。
現地でたくさんのお金を使ってもらったほうがいいですから、、、。
シロザケ・カラフトマスは旬のターゲット
ビッグファイトを満喫しましょう。
サーモンフィッシング。欧米では古くから文化としてスポーツフィッシングとして行われています。しかし日本ではつい最近まで法律で禁止されていました。産卵のために回帰したサケマスを川で捕獲してはならないという水産生物保護法によって完全にご法度だったのです。それほどサケマスは、重要な水産物だったのです。それが将来のサケマス有効利用の方法を探ろうとして「釣獲調査」という形で私たちは調査員という形で釣りができるようになりました。
代表的なサケ・マスとはシロザケ(チャムサーモン)とカラフトマス(ピンクサーモン)で。英語ですと両方ともサーモンと呼びまからサーモンフィッシングとしては好敵手であると言えます。
北海道の標津町の忠類川が全国に先駆け釣獲調査を開始したことは、サーモンフィッシングに憧れていた方には忘れられない記憶に残っていることでしょう。
今では、北海道のいくつかの川と、本州でも青森県、山形県、福島県、石川県などでも釣獲調査が行われています。
川によっては、河川の非常に狭い範囲内だけで釣りが許可されているため、そこへ釣り師が集中して混雑することがあります。全員が同じ方法で釣るならまだいいのですが、ルアー、フライ、エサ釣りが密集します。当然オマツリも多発します。
サケという他に例を見ない魚を釣りたいがために集まっているのですから、お互いの譲り合いも必要になります。
北海道の小河川にて
新潟県荒川にて
野性魚との出会い
これらの魚は、稚魚が海へ下ってそれが北太平洋を回遊して成長し、母線回帰した魚たちですからほぼ野生魚と言えます。ほぼというのは、孵化事業で稚魚を放流しているケースがほとんどだからです。それとて海に下って北洋を回遊し、成長する段階に関しては、人の手をまったく借りていませんから、パワーは野性魚そのものです。
私たちが普段相手にしている、遊魚のために養殖され、必要に応じて放流されている魚とは、別格の魚です。
北海道の一部の海域では、海岸から釣ることができます。その場所は砂浜だったり、砂利浜だったり、磯や港であったりします。
周辺に小河が流れ込んでいて、淡水の匂いがしていることが条件で、サケやマスはその匂いを頼りに、周辺をウロウロしているのです。その場所は概ね岸近くでルアーが十分に届く距離にあります。しかしフライではぎりぎりかも知れません。
ときには魚が川に上ってしまって、全く河口付近にいないこともあります。あるいはこれから遡上しようとしている群れが大量に押し寄せている場合もあります。
魚が釣れるか釣れないかは海で釣るなら回遊、河川釣るならの遡上によって決まり、ドンピシャのときに行けばそれはそれは素晴らしいゲームができるのです。遡上のピークは必ずあります。それは概ね、1週間から10日前後。毎年このあたりと言われている時期に行けば間違いなくサーモンの遡上に出会うでしょう。
遡上期間は1カ月前後という川がほとんどですが、そのシーズンは北海道では8月末のカラフトマスから始まり、9月末からはシロザケが始まります。東北では11月中旬に終わる川と12月まで続く川があります。
どの場所でもシーズン初期は「今年は遅いのかな?」とか終期になると「もう終わりかな?」と遡上や回遊の少ない日もあります。また盛期でも「昨日はたくさん上ったけど今日はねえ。」とか、「雨が降って川が増水したから一気に上ったよ。」などという情報もあるものです。
サケがルアー(フライ)に食いつくわけ
. 何十、何百という群れで接岸遡上しても、やる気があってルアーにヒットするのはごく一部の魚です。川に上ったサケは基本的に餌をとりません。十分な栄養を蓄えて、川に上り、生殖線に栄養を与えながら自らはやせ細っていき、産卵後に死んでしまいます。
北海道の例では、カラフトマスの場合、セッパリになって婚姻色が出た魚よりも、銀色に近い方が好奇心が強く、よくルアーを追います。
サケがルアーを追う理由、それは専門用語で言うとリアクションで、食欲のみではないことを覚えておきましょう。従いまして、釣り方の基本というものはありますが、それがすべてではなく、とんでもない釣り方で突然釣れることもあるのです。
マラブーフライに食いついた
また川に遡上した魚は、婚姻色の有無にかかわらず、河口付近の方がルアーに反応しやすいです。早朝は、動いているものなら何にでも反応するということさえあります。福島県の木戸川に遡上するサケは、他の川に例をみないほど特に好奇心が強く、有効利用の釣獲調査でも河口から200m~500mぐらいの間で釣るので、最も釣りやすいサケと言えるでしょう。
他の川でよくあることなのですが、やや上流部で釣るときは魚の気配がしない時に、突然ヒットすることもあるので常に投げ続けていなくてはなりません。そしてもし定位する(流れの中でじっとしている)魚を見つけたら、その魚に何度も何度もルアーを変え、引く角度を変えて釣る努力をしてください。あきらめかけたときに、いきなりパクッということもあります。
BUXと言うスプーンはサケのためにデザインされている。フロントを重くし、浮き上がりにくいようになっているとか。
釣れないから、と移動してしまうより、実績のある場所では回遊(遡上)を待って粘ることも大切です。満潮から下げ潮にかけて突然ヒットし始めることもあるのです。
回遊があるかないか、あるいはあったかなかったかは、情報がすべてですから、先行者がいたらぜひとも声を掛けて聞き、お互いに情報交換をしましょう。
タコベイトは神話になるほど威力があるが、、、、。
木戸川のサケ釣り
私の体験から
福島県の木戸川(請戸川も)では有効利用調査とはいえ、1シーズンに一人1日しかエントリーできません。
人気があるので調査員の申し込みは抽選です。抽選で外れたら、その年その川では釣りはできません。
シーバスロッドで釣ったシロザケ。ちなみにサケ釣りでは遡上が確認しやすいので、偏光グラスは必携です。
私は4年の間に木戸川に4回エントリーしましたが、1回目は雨で増水して中止、2回目は適当に遡上があり、ルアーの仲間は釣っていましたが、私はフライオンリーでボウズ。
初めて木戸川で釣りをして、どこで釣ったらいいのかわからず、やっと魚のたまっていそうな場所を理解した時にはルアーや、エサ釣りの方がたくさんいて入れませんでした。
3回目は朝ルアーで1尾釣ってから後はフライで、と頑張りましたがフライでは釣れませんでした。
ところが4回目の2009年、つまり釣りとしては3回目ですが、朝2投目からフライで釣れて、そしてまた3投目で釣れて、大満足。その後いろいろな方法で釣りをしてみて、ルアーでもすぐに釣れました。結局12尾フライで釣りました。ルアーの仲間は25尾釣った人もいました。後でわかったのですが。、この日は2009年度、最も遡上の多かった日だったそうです。
この日初めてサケ釣りをした若き友人は「サケってこんなに簡単に釣れるのか?」と笑っていましたが、私にとっては4回目でやっと当たった貴重な日でした。
そして2010年。行った方はご存じかと思いますが、ほぼ玉砕!
遡上数自体が前年度の5分の1。そこそこ釣れた日が4日ほどあったらしいのですが、絶望的に釣れないのは、有効利用調査の一般区間に魚がいないためでした。そこで特別解放区間に監視付きで入れていただきやっと1尾釣れました。
監視員はトータルアドバイザーの管野利一さんです。彼はガイドをも務め、初心者、子供、女性にも一所懸命釣らせていました。
とりあえず1尾釣ってもらおうと言う漁協の考えを実行してくれた管野さんがいなかったら、今年の木戸川は無秩序でクレームだらけだったことでしょう。
釣れないときには釣り師の性が出るようで、ルール違反、マナー違反でイエローカードの方もいたようです。
こちらのブログもぜひ参考にしてください。
2011年の3月11日の東日本震災で、木戸川のある楢葉町は津波被害と原発事故による全町民避難区域に指定されてしまいました。2012年8月避難解除になりましたが、帰宅するには時間がまだまだ掛かるでしょう。
1日も早い復興を願います。
サケは自然が育てた魚だから
自然の遡上魚ですから、その日の天候やその年の海洋状況によって、遡上量が左右されます。そのために釣果が変わることは仕方ありません。時にはまったく釣れないこともあります。あるいはホッチャレ(産卵後のサケ)ばかりだったり、、。
「釣れないじゃないか!」と怒る前に、これも自然と納得すべきです。
気持ちは分かりますよ。3か月も前から申し込んで、しかも抽選で、当たったらこの日をワクワクしながら待って、当日サケがいない!と言う状況に出くわした時のショック!!!
しかしやはり自然、いないものは仕方がありません。納得できないのなら、サケの釣獲調査に申し込まないほうが無難です。
最近分かったことですが、漁協が下流で捕獲したサケを、選別して調査区域へ放流するという川もあるそうです。サケ有効利用釣獲調査ではなく、遊漁料(調査量)を得るために釣り人の釣りたい気持ちを有効利用しているような体制です。
そのような場所ではホッチャレが多いと言う特徴があります。そんな川ではまともなサーモン釣りはできません。河口に近い場所も捕獲区域として開放している川を選んで行ったほうがいいでしょう。
ホッチャレは溯上直後の魚に比べると、ゲームの対象としてフェアではない気がしますが、初めて釣る人の中にはホッチャレでも大喜びする人もいますから、サケ有効利用になっているのかもしれませんが、、、。複雑な気持ちです。
とある友人のブログから(マナーは守りましょうと言う話)
行ってきました木戸川へ。
そう、サケ釣りです。
サケがもう残ってないよ~~と言われながら向かった木戸川。
その言葉通り、調査区の700m区間にはサケの姿が・・・??????・・いない??
朝一で釣れたのを見たのは、全体で1匹だけ・・・・・
あらま、本当に魚がいない。と、諦めて、キャストと流しの練習。止水と違って流れのあるところでのキャストはまた独特のものがあります。
あっ、ちなみに午前中はダルハンドでフライをやっていました。
で、8時過ぎに上流の区間を特別開放するというので、上流へ。ここには捕獲フェンス遡上を阻害されたサケがいます。中には産卵床を掘っているサケも。
まあ、魚がいれば、釣れる気がするわけで本気モード。
多くの人が上流へ行ってしまったのですが、私は、その少し下流に魚がいるのを発見。人が少なくて魚がいる最高の条件。ならば・・・のはずが、あら?なかなか食ってこない。なんて思っていたら、フッキングミス。少ない魚で少ないチャンスをものに出来ない自分の腕の悪さにショックを受け、再び竿を振りますが、簡単には食ってきません。
そうこうしている間に、下流側に人が入ってきました。
そして、私の狙っていたポイントに立って竿を振り出します。
どうしたものでしょうか??
これで私は釣りが成立しなくなりました。
仕方なく、場所移動。少し上流に移動し、今度は対岸近くのポイントを攻めます。執念深く攻めていると、待望のヒット。今度は口にしっかりフッキング・・・なんて思ってファイトしていたら、すっぽ抜け。あらま。
つくづく自分の腕の悪さに落胆。
その後、網を曳く為に特別解放区が閉鎖されたのでコーヒーブレイク。
そういえば、知り合いにも会いました。あらま、こんなところで・・・なんてお話をして団欒。
ゆっくりして、昼食のお弁当も食べ、さあ、午後の部です。午後はルアーも装備してお出かけ。人が多くてフライが出来ないときの保険です。
よ~~くポイントを見定めてから場所を決め、ルアーを投げます。最初は菅スプーンの8gで始めたのですが、ちょっと重すぎな気がしたので5gに変更。
だんだん魚が色々なところに見えてきたのですが、なかなか食ってきません。
しかし、神様は私を見放してはいませんでした。一瞬重くなった微妙な変化に合わせ。これで見事フッキングです。今回はもうバラスわけにはいきません。流れに乗られながらもゆっくりと寄せてランディング。
本日の1本です。
この後は釣れていない人に場所を明け渡して私は下流でフライの練習をしようかと思ったのですが、一番いいポイントには人が立っているので釣りになりません。しばし休憩。
終了20分前ぐらいに場所が開いたので竿を出しましたが、全く反応なく終了。
まあ、昨日の状態で1匹釣れたので、大満足でした。難しい釣りは難しい釣りでやっぱり面白いですね。
しかし、ダブルハンドを振るぐらいのフライマンが、サケのポイントもわからず、そのポイントの上に立って釣りをしているのにはびっくりしました。
何人かの人は気付いていましたが、本人たちは全く気付かず釣りをしているので、ポイントがつぶされてしまいます。
狭い範囲で多くの人が竿を降るので仕方のないことだと思いますが、これから行く皆さんは、良くポイントを見てから川に入ってくださいね。自分が立っている場所が一番のポイントだったりしたら、恥ずかしいですよ(笑)
そんなわけで、今年のサケ釣りも無事に1匹を釣って終了。楽しい一日でした。
(2010年11月17日)
サケを釣る(その1)
ルアー&エサ釣り
釣り方・ルアー
川の釣り
木戸川で釣れたギンピカのメス。
川では底を釣るというのがセオリーです。しかしながらサケの背中が見えるような浅い場所ではルアーを引けば、必然的に底を流れます。底を叩くという意味のボトムパンピングはスプーンを川底に当てながらスイングさせたりしたり引いたりするテクニックです。また河口域では、逆に表層を引いた方が、よく釣れる場合もあります。その場合フローティングミノーを使えば表層を楽にトレースできますが、スプーンの場合は、飛ばしウキを装着させて引く方法もありますこれを北海道ではウキルアーまたは、ウキスプーンと呼んでいます。スプーンの代わりにタコベイトをつけるだけの場合もあります。
サケ釣りのフックはシングルフックが主流。
ルアーフィッシングのスタイル的には美しくないのですが、ウキがあることによって今どのあたりにルアーがあるのかわかりますし、魚が食いついて手前に突っ込んできた時も、ウキが抵抗になるため弛みが出来ずにバラシが少ないいう利点もあります。
水深1m以浅の表層で、かつ向かい風などの場合はウキルアーは有効です。この方法は河口や海でも有効です。
浮きルアーで釣れたサケ(木戸川にて)
ミノーでトゥイッチ、あるいはジグを上下にジグザクさせるためにロッドをあおりながらルアーを躍らせるのも効果的です。
川では底を叩くボトムバンピングが絶対的な威力を発揮することもありますが、川底の石が大きいと、ルアーの手前のラインが石の下に入ってしまうと言う根掛かりが多いのが難点です。
釣り方・エサ釣り
エサ釣りではミャク釣りスタイルとウキ釣りがあります。
ウキ釣りのウキは、ピンポン玉大から遠投用には磯のヒラマサ用など大きいものでも対応します。
あれだけ大きいサケですからさぞかし大きなアタリが来るのだろうと言う考えは、今すぐ捨ててください。アタリは小さいです。
流れている目印やウキが止まる程度がほとんどです。極端にイトを張っているときはコツンのアタリがあります。
ウキがジュボッと水中に消えることはまずありません。
不自然を感じたら、すべてアワセてください。
海・河口
海で釣れたカラフトマス。
ルアーの基本は投げて巻くだけのストレートリトリーブです。河口付近の流速が遅い場所ならルアーはほぼ一直線にアングラーの方へ戻ってきます。流速のある場所なら下流へ扇状に弧を描きながらルアーは引かれてきます。とても速い流れなら着水した後リールを巻かずに流れに任せて弧を描かせるスイングという方法も有効です。
海岸では波のない場所ならストレートに引けますが、波がある場合、ルアーは結構不偽足な動きをしてしまいます。これがまたサケの食い気を起こさせるのです。
エサ釣りではウキ釣りあるいは枝ハリスを付けたブッ込み釣りが行われています。
ウキ釣りの場合、川の釣り方と同じ方法で掛かってきます。
ルアータックル
スピニングかベイトかは趣味の問題
サーモン用のタックルは各社から発売されていますが、シーバスロッド、固めのバスロッド、そしてエギングロッド(意外に強い)などのスピニングタックルでも十分使えます。リールはダイワの3000番クラスが適合します。
最近ではベイトタックルを使う人も増えてきました。ちなみに文豪の故・開高健氏は生前、いつもベイトタックルでサーモンを釣っていましたね。
ベイトタックルは、バスタックルの強めのもので併用できる。
ラインはカラフトマス中心なら12ポンド、シロザケ中心なら16ポンドがよいでしょう。ナイロンラインなら直結しますが、PEラインは私はお勧めしませんが、それでも使うときは1mほどショックリーダーを接続しましょう。
PEラインはバラシが多く、バレるとルアーが飛んでくるので注意が必要です。自分を釣ってしまうならまだしも、混み合う場所では他人にあたる可能性もあるのでさらにご注意をと、木戸川のトータルアドバイザーの管野利一さんが言ってました。
実際に事故は何件も起きているそうです。
ルアーはシロザケ用なら13cm前後のミノー、カラフトマスなら10cm前後。そして18g前後のスプーンや、遠投用に40g前後のジグは共通で使えます。
フックは河川によって規制があります。釣獲調査での遡上したサーモン狙いではシングルフック規則があります。トレブルフックではファールフック(スレ掛り)が多発するため、調査にならないからです。
スプーンやプラグ、すべてシングルフックに交換しておきましょう。市販のタコベイト仕掛けはフックが2本付いているので1本切らなくてはなりませんが、がまかつの「サーモンリグの場合、切ったフックは管付きですので、他のスプーンに流用できます。
スプーンはこのようにシングルフックに交換。各種シングルフックはルアー専門店などで販売中。
ミノーに2本シングルフックを装着した例。
ミノーに付けるときはタテアイになったフックを使用する。
スプーンのシングルフックにタコベイトを装着した1例。結構根強い人気がある。
市販のタコベイト付きフック。シングルフックがダブルでチラシバリになっている。1本カットして使わなくてはならない。
エサ釣りタックル
のべ竿かリール竿か
エサ釣りの場合は、1本釣りののべ竿で、パワーゲームをするケースと、リール竿で、ウキを付け、フカセ釣りのように流して釣る場合があります。
エサはイカタン、あるいはサンマの切り身です。
福島県・木戸川の餌釣り。混んでいるので譲り合いが必要。
エサ釣りファンには、のべ竿で一騎打ちするほうが人気があります。通常のミャク釣り仕掛けで、ミチイトは竿に指定された一番太いサイズのハリスと通しで。ハリは伊勢尼の12号~14号クラスを使います。
掛かったらロッドを立て、極限まで曲げて引きに耐えます。一直線になってしまったらラインは切られてしまいます。
これにハマっている釣り師に聞いたら、リールなしで釣ってこそ川釣りの極意なのだということです。
新潟県荒川の餌釣り。荒川では広いエリアでの監視の関係上ゼッケンをつけなくてはならない。
またそこまでしてサケを釣らなくていい場合は、リール付きが便利です。走られればラインは出ていきますから、、、。
磯竿の3~4号を使うのも面白いです。あるいは9フィート以上のシーバスロッドを使います。
シーバスロッドでエサ釣り。
リールの道糸はカラフトマスで3~4号、シロザケは4~5号。
飛ばしウキスタイルの仕掛けを作って、ハリは伊勢尼の12号前後、ハリスは4号ぐらいで釣ります。
時にウキ下を10cmぐらいにして水面直下を釣ったり、1m以上とって漂わせたりします。おもりを付けて底を引きづっても効果ありの時ももちろんあります。
タコベイトとのコンビネーションでもOK。さまざまな方法を試してください。
遡上魚であるがゆえに「これぞ」という決定打はありません。
福島県木戸川のサケの餌釣り。対岸に追い込んで釣っているようだ。
サケを釣る その2
フライフィッシング
日本の現状で夢を見る
これぞ日本のサーモンフィッシング
カナダ・アラスカのサーモンやスティールヘッドと同じ興奮は味わえないかもしれませんが、、、。
木戸川での釣獲調査。
今までご説明したとおり、海外の本場の釣りとは景色もかなり異なり、釣り場管理もまだまだと言いたいところですが、やはり遡上魚はデカいので面白いです。
調査員にならなくても狙えるサクラマスは特殊です。この魚はそう簡単には釣れません。
しかしなんとかサーモンを、と考える方も多いことでしょう。
ピンクサーモンは国内でも、北海道へ行かなければ釣れませんが、本州のシロザケは自家用車で行けるので、最も身近な大物釣りと言えます。高速代もちょっと安くなりましたし、、、、、(笑)
フライで狙う場合、混雑しているとはいえ、川のフライフィッシングらしい釣り方で釣れますから大歓迎です。
いつかスティールヘッドなど大物遠征を、と夢見て購入したツーハンドロッドが活躍するステージでもあります。
タックル
ツーハンドでも、シングルハンドでも投げやすい方法でどうぞ。と言いたいのですが、やはりツーハンドがお勧め。気分が違います。
軽めのものは楽ですが、河口や、海では投げて引かなくてはなりませんので、遠投できるタックルを。そして遠投の練習も不可欠です。
川によっては、遠投しなくても自分の真下にサケが溯上して来ることも多々ありますが、投げられないから釣れないということもありますので、ぜひとも練習してください。
ツーハンドロッドがひん曲がる。本州でこの釣りは非常にエキサイティング。
魚の平均サイズ
チャム(シロザケ)65~85cm
ピンク(カラフトマス) 50~65cmを前提にすると
シングルハンド8番~10番が理想です。長さは9~9,5フィート。
ツーハンドなら7番~9番です。長さは12~15フィート。
スカジットラインの重さで言うと400~550グレイン前後ぐらいかなと思います。
遠投しないなら今流行りのスイッチロッドもいいと思います。
時には逆風を突っ切って投げなくてはならない北海道の海でのカラフトマス。ツーハンドのロッドが活躍する。
木戸川でのフライフィッシング、時には遠投が必要なので、これから釣りたい初心者は、しっかりとキャスティング練習しておこう。
女性には「適当に飛んじゃう」という理由からも、ツーハンドがお勧めです。体力と重さを考えると、ズバリ7番です。スカジットの450グレイン(29g)相当が振れるロッドですね。これだとシングルハンドの10番を振るよりはるかに楽ですよ。
エサ釣りの釣り師に交じってキャストする木戸川のフライフィッシング。
ライン
フローティング、シンクティップが主流
スカジットやスペイなら先端がチェンジャブル(交換可能)なものがお勧めです。フローティングの先端にシンキングのティップを接続します。
フローティングラインならシンキングリーダーのエキストラファーストシンキングの5~10フィートも使えます。
水深がある場所で沈めて使うなら、フローティングボディよりも、最近発売されたSA社のマスタリー・スカジットインターがお勧め。IFFF公認のツーハンドキャスティングインストラクター下澤孝司さんのデザインによるジャパンスペシャルで、日本のサケ釣りのために作られたかのようなラインです。
リーダー
フローティングラインの場合は9~12フィートの02X。
ポリリーダーを使う場合でも先端の強度6kg以上が理想です。
シンキングの場合は、一本のストレートラインを2mとり、ダブルラインを作ってそれを撚って、さらにちいさなループを作ります。それで1,5mぐらいのリーダーが出来上がりますので、それをシンキングの先端にループトゥループで接続します。
そのためにシンキングの先端は、溶着か、ブレイデッドループを作っておいてください。
フライ
赤、オレンジ、ピンクならなんでもOKと言われます。
パターンはスティールヘッドのコーナーを参考にしてください。
赤いイントルーダーにヒットした76cm、メス。木戸川にて。
岸が急斜面の場所もあるのでネットは必要。
オレンジのゾンカー、赤のイントルーダー、ピンクのブルースなど、よくヒットします。
浜からのツーハンドロッドでのキャストで、オレンジのフライにヒットしたギンピカフィッシュ(カラフトマス)海のカラフトマスはフライを追いかける。
釣り方
ピンクサーモンは川でもよくフライを追いますが、チャムサーモンはまず追いません。
目の前に流れてきたものをパクッとやることがある程度です。
ですからスティールヘッドを釣るときのようにダウンストリームスイングしても釣れません。ラインを送り込んだりとトゥィッチして自然に目の前に届けることに全力を注いでください。
自分の立ち込んでいる真下でよくヒットする理由は、ラインが一直線になった、その場所にサケがいた場合や、あるいはたまたまタイミング良く遡上してきた場合、目の前でフライがふらふらするから食いつくのです。
スイングしたフライが止まった瞬間に、追いかけてきたサケが食いつくのではない
ことを知っておいてください。
浅瀬にいるサケに口にファールフックさせるという技もあるみたいですが、、、。
サケがいるのになぜ掛からないか?
それはフライがちゃんと沈んでなくて、サケ目の前で、フラフラしていないからです。
目の前を横切るフライを追わないのです。
川に上り成熟したチャムサーモンは、ヤル気まったくなしです。(原発事故で調査中止中の福島の木戸川と請戸川は例外)
きた!ツーハンドロッドがしなる至福の時。
基本的にフライフィッシングは非常に不利です。日本のサケ釣りは混雑しているのが普通です。なかなか下流に思いっきりラインを流せませんし、その下流に流している場所に、フライの釣り方を理解していないエサ釣りやルアーの人が入ってくることもしばしばです。
ルアーほど遠投できず、アピール力もなく、流れを直角に横切ることも出来ないし、エサ釣りのように匂いもしないのがフライです。
ルアーとエサではよく釣れるけどフライでは釣れない場合。エサでしか釣れない場合、ルアーしか釣れない場合はあります。
しかし、、、、
フライしか釣れない状況は遡上魚に関してはまずありません。
そうまでしてなぜフライフィッシングを行うのか?それはフライフィッシングが面白いからです。
頑張りましょう。
最近流行りのツーハンドロッド。カナダのスティールヘッドに行かなくてもシロザケ釣りやカラフトマス釣りで活躍する。
時にはロールキャストだけでもヒットするけど
うるさいキャストは止めたいね
さらに、、、、
フライが不利な点であったバックスペース必要という問題も、スペイ、スカジット、スカンジナビアン、アンダーハンド、などロールキャストから進化したキャストをすることによって解決できました。
しかし水面を利用してロッドに負荷を掛けるダブルスペイスカジット、サークルCキャストなどをする人の中には水面をベチャベチャ、ジュバジュバ、バッシューンと飛ばす人がいてうるさいです。
水面が静かな場所でうるさいキャストをするとサケは対岸へと遠ざかって行きます。(本当)
スカジットキャストで水面を騒がせる人が多い人の並びで、静かなスペイで遠投しして釣れたメスザケ。
魚を追い払ってから釣るなんて、、、。
うるさい遠投よりも、静かに手前を釣るほうが魚は寄ってきます。(これも本当)
出来れば華麗なるスペイキャストで静かに水面からラインを剥がし、ロングキャストできるようになりたいものです。
立ちこむ釣り師の後ろでヒットした例。
サケってどんな魚?
サケのことを知っているようで知らない。そんな方のためにちょっと読んでいただく豆知識です。
サケ釣りに行かれる方はぜひ読んでおいてください。
サケマス魚類の予備知識
シロザケのオス(右)とメス。
サケは川で生まれたのち、海に下って回遊し、大きく成長して母なる川にまた産卵のために戻ってきます。これを母川回帰といい、サケの回遊能力の素晴らしいことを示しています。
この母川回帰する目的はただひとつ。産卵です。また遡上してきたサケの産卵場が、私たちの目につきやすい場所であり、生きている姿を見ることができるため、サケは私たちになじみの深い魚となっています。
また食生活だけでなく、教育や研究にも役立っている魚です。
遡上したシロザケ(メス)イクラが入っているが調査のため、釣ったサケはみな漁協へ。
日本のサケというとシロザケのことをさしているのは一般の方もご存じですが、マスと言えばニジマスを想像する方がおおいのではないでしょうか。しかしここでのマスとはカラフトマスやサクラマスのことをいいます。一般に水産用語で使われているサケマスとは、このシロザケ、カラフトマス、サクラマスの3種のことをいうのです。
サケマスは海に下った後、日本海、オホーツク海、ベーリング海、北太平洋を回遊します。海では主にアミ類など動物性プランクトンを食べて成長しています。サケの魚肉のサーモンピンクとも呼ばれる特有のオレンジ系の赤色は、エビやカニ類に多く含まれる餌に含まれるアスタキサンチンをはじめとするカロテノイド色素に由来しているためです。赤色色素を含まない餌を食べると、サケの肉は赤くならず、白身の魚肉となります。
魚類学的な分類においては、サケ目の唯一の科であるサケ科に属するものがすべてサケの仲間ということになりますが、その中にはイワナの仲間、ニジマスやヤマメなどの仲間、そしてイトウもサケ科です。そして日本人にはなじみがありませんが、グレイリングの仲間やコクチマス、ホワイトフィッシュもそうです。それらを合わせると70種弱になります。
サケとマスの違い
サケマス類という呼び方で、サケとマスはどう違うのかという疑問を持つ方も多いかもしれません。しかしそれはクジラとイルカの呼び分けと一緒で、概ね大型のものをサケ、小型のものをマスと呼ぶ傾向があります。英語でもそのようです。
しかしながら、イワナの仲間やイトウのことサケと呼ぶ習慣はなく、7種類の太平洋サケの中でニジマスを除いた6種、そして2種の大西洋サケの中ではタイセイヨウサケの合計7種を主にサケ(サーモン)と呼んでいます。
例えばシロザケは英語でチャムサーモン、やや小型のカラフトマスは英語ではピンクサーモンと呼ばれます。サクラマスはマスサーモン。サクラマスをチェリーサーモンと釣り師は呼びますが、それは造語です。このように日本語ではマスでも、英語になるとサーモンというケースも少なくありません。
ベニザケの英名はソッカイサーモン(アラスカではレッド)、ギンザケはコーホサーモンですがアラスカではシルバーと呼ばれるなど英語での方言もあります。
カナダのギンザケ(オス)
キングサーモンとして知られている巨大なサケの正式な英語名はシヌークサーモンですが、この魚は日本語でマスノスケ(大きなマス)と呼ばれます。
アラスカ、タラチュリトナ川のマスノスケ(メス)フライロッドで40分のファイトだった(約30ポンド)
このようにそのネーミングの根拠には一律の決まりごとがある訳ではないのです。釣り堀で子供達にも簡単に釣れるために結構ポピュラーなニジマス(レインボートラウト)も海に降りて、サケのように大きくなり、これはスティールヘッド(テツガシラ)と呼ばれます。日本でもテツ、テットウと呼ばれることがあります。
婚姻色の出た鉄頭。(オス)
詳しくは拙著サケマス魚類のわかる本(山と渓谷社刊)をご覧ください。
ミステリアスな母川回帰
サケの母川回帰の生態、は今でも非常にミステリアスです。一度外洋に出て行った魚がどうやって母なる川を見つけることができるのでしょうか?
太陽コンパスの利用、磁気コンパスの利用、そして嗅覚の利用をしていることが実験にてわかっていますが、それを自然界において組み合わせて母川回帰するサケの特殊な能力です。サケの仲間のうち、太平洋サケの仲間はニジマスを除き、産卵後はほぼ例外なく斃死します。また海でたっぷりの栄養を体に蓄えて遡上するため、川に入ってからは餌をとりません。
産卵後も死なないサケ科魚類には、イトウやイワナ、タイセイヨウサケの仲間もいる。海で成長するため川は単なる産卵場所と考えられますが、川に上ってすぐに産卵するタイプのサケと、約半年間も川にいて卵の成熟を待ってから産卵するタイプがいます。同じ種類のサケでも、最上流の支流で産卵する魚群と、河口付近で産卵する魚群とがあります。さらに、孵化後海に下らないで河川内に留まり、産卵期になって遡上してきた同種の魚と一緒に産卵するタイプもいます。
渓流釣りでポピュラーなヤマメはサクラマスの河川型で、一生を河川で過ごしますが、海から遡上したサクラマスの産卵に参加することで知られています。
産卵後斃死しないタイセイヨウサケや、スティールヘッドも餌をとらないと言われています。遡上、産卵、降海をするためのエネルギーを海で摂取して蓄えているのです。
生まれた川に必ず帰ってくるのかという点では、ベニザケ(ソッカイサーモン)、マスノスケの母川回帰性が高く、サクラマスやギンザケがそれに続きます。日本のシロザケやカラフトマスは実は回帰性がそれほど高くありません。その理由は、回帰性の高い前者は淡水域で、ある一定の期間、幼魚期を過ごし、成長した魚がスモルト化(銀化・海水適応能力を身につけること)して海にくだるのに対し、後者は孵化した稚魚がすぐに海に下るためだと言われています。
回帰性が強くないということは、生まれた川に遡上せず他の川に上ってしまうことであり、どこが自分の生まれた川であるのか判らなくなったのか、他の川に上るサケの群れについて行ってしまうようなことや、母川の水温が高い時にそのとなりの川に上ってしまうこともあるんです。
それらの魚を迷いザケという。極端な例だと漁港に迷い込んでいるケースもあり、よく観察したらその漁港の奥には小さな流れですが、川があったなんてこともあります。
しかしこの行動は魚の生物の「種」を保存するためには有効です。例えばカラフトマスの場合寿命が2年。
このため1年おきに、魚が多いけど小型魚ばかりの年と数は少なめだけど大型が多い年があると言われています。もしカラフトマスの母川が2年連続で産卵期、あるいは遡上期に川がアウトになった場合、つまり大雨、台風、工事がもたらす河川の悪化、洪水などで産卵できない、あるいは産卵床が全部流されるという事態が発生した場合はその川のカラフトマスは絶えてしまうことになります。
しかし回帰性が低ければ、よその川に行く魚もいるわけで、遺伝子は絶えません。また条件がよくなったらその川に戻ってくれば、その川の遺伝子は持続されるのである。こうやってリスクを回避できます。
シロザケもしかり、シロザケの成長段階において成熟は2年~7年という多様性があります。これだけの多様性を持つ生物は稀です。。この間にバラバラに母川回帰すれば同様な悪条件、天変地異などが発生しても子孫は繁殖していけますね。
サクラマスのように河川型がいるタイプでは、降海時期に何らかの理由で河口が砂利や氷で閉ざされ、海へ降りられなくなったとしても、その間、河川内に残留していればいいのですが、シロザケはそうは行きません。このように、サケの生態に多様性が多いことは、生息環境の不安定さに対応する保険のようなものなのです。
遡上と産卵
サケは体色は産卵期(河川遡上期)になると、海洋生活をしていたころの銀色一色から変化が現れます。これを婚姻色といいます。卵など生殖線にも筋肉から栄養が行くために、成熟すればするほど肉は白くなり、脂質が抜けていきます。
サケの卵は、魚類としては非常に大きい方です。シロザケでは平均7mm前後、カラフトマスは5mm前後。卵の数は平均で2000~3000粒。ちなみにクロマグロは200kgという巨体で1mm前後と体に対しては極く小さいのですが、1千万粒も産むことが知られています。
シロザケの産卵。ペアリングして、メスが産卵床を掘る。
卵は受精から積算温度480℃日で孵化します。水温が10度なら48日かかるわけです。
親魚の回帰は北方で早く、南方では遅いです。北海道では8月ごろからで、岩手県では12月から3月まで続きます。これは南方ほど川の水温が高いため、短日数で孵化するため、浮上した稚魚が、降海する時期が初夏のプランクトン発生量が多くなる時期に合わるための適応です。
自然界においては、サケの遡上は重要です。川に上る途中のサケや、産卵後の息絶えた魚体は、クマやキツネなど野生動物にとって重要な栄養となります。またそれらの動物が森の中へと魚体を運んで行って食べた残骸は、森に栄養分をもたらして木々が豊か育ちます。
サケが遡る川辺の木と、そうでない場所の木の成長の良さが顕著だと言う調査結果も出ています。
親魚の死骸は水生昆虫など小さな生物のエサになり、また孵化後の稚魚が育つ川の養分にもなります。窒素やリンも供給します。
サケの定期的な遡上は、周辺の生態系と一体化しているのです。それは海の栄養を川の上流へ運ぶという特殊な役割を果たしているからです。
人とサケの関係・・・・遊漁(スポーツフィッシング)も
サケは食用資源としても遊漁対象としても、その多様性を持って、世界中の生息域周辺の多くの民族、人々に利用され続けてきました。
人が手助けしなくても、海を成長の場とし、サケは帰ってくるのです。しかし近年、農地開発や、森林開発、生活排水の負荷、ダムや河川改修により、産卵場所がなくなり、サケの繁殖をめぐる状況は世界的に悪化の一途をたどっています。本来サケが上流まで上っていた水系の森の生態も当然変わってきているのでしょう。
種川(産卵する川)さえ確保すれば、自然繁殖が大いに期待できる魚です。欧米諸国では食用と遊漁(スポーツフィッシング)の利用がうまくいっているにも関わらず、わが国では、ダム建設など種川への遡上を阻む河川事情にし、自然産卵が無理だからと人工種苗に置き換えて、水産資源保護法でサケマスの捕獲を禁じました。
そして今、利用が減ったからと安易に「釣獲調査」などという有効利用を考える場合ではないと思います。遊漁利用するならば欧米の例を見習ったうえで、参加者全員が納得する独特な管理方法で行うべきですが、川の規模の違いや、釣果が安定しないことが原因だでしょうか?本場のダイナミックなサーモンフィッシングとはほど遠い実状です。
これからは人工種苗だけに頼らず、先人たちの種川利用など賢い資源の再生産能力を確保したうえで、利用法を改めて学ぶべきではないかと思います。
サケを食べる
秋ザケのムニエル。ほと良い脂が乗り週な味を呈する。
特に、食用としては深刻です。国内産のサケ需要は激減しています。
年末のアメ横からもサケは消えました。
サケは秋から冬の魚でしたが、今では一年中生食ができます。しかし国産のそれは一部の特殊な超高級シロザケ(トキシラズ、メジカ、ケイジ)だけなのです。
みなさんがよくだべているであろうサーモンはほとんどが養殖モノです。
回転寿司やスーパーマーケットの鮮魚コーナーでもおなじみの、サーモンは海外から輸入される養殖魚なのです。ノルウエーサーモン(タイセイヨウサケ)、チリのギンザケ、トラウトサーモン(海中養殖ニジマス)という魚たちは、非常に美味しい魚であると評価が高いのです。
天然サケのイクラは極上品。木戸川漁協では醤油味イクラを販売しています。イクラ丼で食べたら美味しかったです。
私たちが魚を美味しいと感じるのは魚の脂分です。それが少ないと水分が多くなり、水っぽいとか、あるいは水分が少ないとパサパサだとか言います。
そうならないよう脂分を計算して餌を与えて1年中、養殖されていますから、天然モノではこれに太刀打ちできません。
しかし、いつも脂の乗った魚を食べ続けるというのはいかがなものでしょうか?
天然ものには「旬」があり、秋ザケには秋ザケ独特の旨みがあります。それを養殖魚と比べて「脂が足りない」イコール「美味しくない」と判断するのはハンバーガーなどのファーストフードに慣れきった現代人の特徴ではないでしょうか?
さらにそれは日本人の食文化である「旬」がわからない人たちが増えていることも意味しています。
また輸入品の生食の場合、水揚げしてから食卓に届くまで最低でも5日ほどかかります。しかし国内で捕獲されたサケは当日、または翌日入手できるので新鮮だし、しかも流通に掛る消費エネルギー(フードマイレージ)も格段に少ないのでエコを考えた場合にも、やはり私たちにとっていい魚なのです。
脂の乗り過ぎていない秋ザケの身はこんな色(木戸川)
脂の乗りすぎていない天然サケは、高タンパク低カロリーで、これほど健康な食材はありません。また養殖ものを食べるなら、輸入品よりもむしろ国内で生産された新鮮なニジマスをもっと見直すべきだと思います。自給自足、国産魚は国内で消費するという当たり前のことを日本人は忘れかけています。もったいない話です。
以上のようにサケ(マス)は魚として、生態的にも理科教育に役立ち、森を豊かにし、私たちに食べモノとして栄養を与えてくれ、遡上を観察することで癒され、釣ることによって感動を与えてくれる、すべての面から考えても非常に魅力的な魚なのです。
日本人は、食べるだけのマグロ大好き民族になり下がってしまいましたが、本来のサケ大好き民族にもどす底力、地域力をサケは持っていると私は信じています。
サケを介して町おこし、村おこしすることも可能です。
福島県・木戸川のサケ。
ここのサケは遡上魚にも関わらず、まだその身が赤くて美味しい。忘れかけていた旬の味がこの魚にはある。
調査では捕獲魚はすべて完了用に個人的にキープできないが、お土産で2尾くれるので、ぜひ御賞味されたい。
2011年3月11日に起った東日本大震災の被害を受けた福島県の原発事故が将来的にサケの遡上に影響を与えないことを祈っています。